先月末にシドニーのパラマッタスタジアムで行われたACL(アジアチャンピオンズリーグ)の、鹿島アントラーズとウェスタンシドニー・ワンダラーズの試合では、ロスタイムの劇的逆転ゴールでアントラーズがACLグループステージ突破への望みを繋ぎましたが、ホームでの最終戦で逆転負けし、グループステージ敗退という、残念な結果に終わってしまいました。
そんな中、去年の川崎フロンターレ、サンフレッチェ広島に続き、今年も鹿島アントラーズの現地渉外担当責任者として、シドニーインからアウトまでの5日間を帯同させて頂きました。今回はその模様をレポートしたいと思います。
到着初日の練習は、元々予定していたグラウンドが滞在ホテルから遠すぎるので、近い場所に変更出来ないかという監督からの急な注文を受け、ホテルから徒歩10分程の距離にある、ごく普通のパークで練習が行われました。土曜日という事で、パークではラクビーの練習に打ち込んでいる人、ジョギング、散歩をしている人がちらほらいる中、軽いランニングとストレッチのみで練習終了となりました。
そしてその日の夜に行われたワンダラーズのリーグ戦の試合を、なんと鹿島アントラーズの監督である、トニーニョ・セレーゾ監督と観戦する機会を頂きました。一応ワンダラーズの戦力を偵察するのが目的という事だったのですが、試合を通じて興奮して何やら叫びまくっている監督を観て、さすがブラジル人だなーと感心してしまいました。
NSWサッカー協会本部のグラウンドで行われた2日目の練習は、ハーフコートを使った攻撃と守備の練習から、攻撃陣はシュート練習、守備陣はボールを大きくクリアする練習、そしてバックラインからのパスの組み立ての練習を行い、最後はセットプレーのマークの確認といった内容で行われたのですが、とにかく鹿島の選手の個々の技術が素晴らしい!そして練習メニューも素晴らしい!でもなぜアジアでも勝てなくなってきているのか?と言われると、アジア全体のサッカーのレベルが上がってきているという事もあるのですが、オーストラや韓国のような、球際の激しさが足りないのかな?と思ってしまいます。
試合前日のスタジアムでの練習は、凄まじく降る雨の中、行われました。公式トレーニングという事で、冒頭の15分が公開、残りの45分が非公開という大会のルールで行われるのですが、1時間というのはあっという間で、こんなに短い練習で明日の試合は大丈夫なのか?と思っていると、なんと監督がセットプレーのサインの確認の練習をしたいから、こっそり練習できるグランドを確保する事は可能か?と、初日に続いて急な注文が入ってきました。シドニーのグラウンドは昨晩からの大雨で殆どがクローズ状態、そもそもこんな大人数でこっそり練習できる場所があるわけがないでしょ!と突っ込みたくなりましたが、スタッフの方から、全力を尽くして色々探してみたが、どこも見つからなかったと監督には伝えるから、なんか聞かれたら、一生懸命探したけどなかったと言ってくれと。ブラジル人監督、只者じゃないです。(笑)
そして午後に行われた公式記者会見では、トニーニョ・セレーゾ監督と、植田選手、監督の通訳の高井蘭童さんと共に、英語の通訳として席に座りました。元々自分がやるという事を聞かされていなかったのですが、会見の2時間前に、急遽やってくれと言われ、心拍数が急上昇。(笑)去年は川崎フロンターレが来た際にも、会見での通訳を一応経験はしているのですが、そもそも通訳の資格はもっておらず、英語も12年オーストラリアに住んでいるもののそれほど自信はありません。通訳は、監督のポルトガル語を高井さんが日本語に訳し、それを自分が英語に訳すという過程を経るのですが、監督は饒舌なうえ、高井さんも絶対に内容を付け足しているだろうと思う位、話が長いので、僕が要約してパッと短く話すと、オーストラリアの記者達は、こいつ絶対に全部訳していないだろう、なんて思っている表情になるわけです。
20分近い鹿島アントラーズの会見が終わったと思うと、間髪入れずにワンダラーズの記者会見の通訳もやって欲しいと。この時点で完全に脳が困憊しきっていたのですが、断るわけにはいかず、とりあえず席に座りました。ワンダラーズの監督であるトニー・ポポビッチ監督の英語は比較的聞き取りやすかったものの、口の中でモゴモゴいっているようなオーストラリア人記者の英語の質問がよく聞き取れず、(ポポビッチ監督はそんな彼の英語も聞き取っていましたが)通訳を始めて以来、初めての(といっても通訳歴2回目ですが)パスをしてしまいました。会見終了後には、知り合いのオーストラリア人の記者から、去年よりは良かったけど、次はもっと準備をしてきて、と言われる始末。そんな中でも暴風雨の中で行われた試合は、鹿島アントラーズの劇的勝利で、試合後のディナーでは、みんな上機嫌。今回は、天気のせいでハーフタイムに予定されていた日系人の子供達の為のイベントがキャンセルとなってしまった事が残念でしたが、個人的にはとても有意義で得るものが多かった5日間となりました。
オーストラリアでプロサッカー選手を目指す男たち2015